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第四章 奈良の真魚

第四章・写真1  この頃の奈良の都は咲く花の匂うがごとき盛りはすでに過ぎ、一部の貴族や僧侶、神官たちが国家転覆を謀る政情不安が続き、南都六宗の力も翳りがみえはじめ、人々も不安な世情の中にありました。

 真魚は幼少から英才のほまれ高く、十五歳で奈良の都に上り、母方の伯父・阿刀大足の個人指導を受け、十八歳で貴族の出世コース、国家の最高機関である大学の明経科[みょうきょうか]に入学します。

 そこで当代一流の学者、岡田牛養[うしかい]や味酒浄成[うまざけのきよなり]に儒教、道教など漢籍を学び、並いる貴族の子弟たちを尻目に最優秀の成績 を収め栄光の道を一気に駆け上ります。若い空海は貴族や僧侶の行きかう奈良の大路を得意満面で闊歩していたかもしれません。

第四章・写真2

 ところが二、三年の後"我の習う所は古人の糟粕[そうはく]なり"と言い放ち、故郷讃岐の両親や一族の出世まちがいなしという 期待に深く悩みつつも、真に生きる道は教でも道教でもなく、仏教の道であると判断し、その出家宣言書であり思想批判書でもある戯曲「三教指帰[さんごうし いき]」を書いて大学をドロップアウトします。

 当時国家公認の南都六宗には就かず、民衆の信仰を集めている山林修行の道、私度[しど]僧を選んだのでした。


◎仏教の道の偉大さを教えたのはある沙門(僧)で「虚空蔵求聞持法[こくうぞうぐもんじほう]」(この真言を百万べんとなえると一切の教法の文義をすべて暗記することができる)を伝授した勤操[ごんぞう]その人であるともいわれています。

第四章・写真3 第四章・写真4

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