杉浦さんは画面に映し出される金剛・胎蔵両界の曼荼羅や、人間のからだとヨーガ行者がよく使うチャクラの絵図の画像をていねいに説明 しながら、ふだん私たちがあまり注意しない曼荼羅の装置などについてその意味を解説してくださいました。杉浦密教図像学とでもいうべき先生一流のアジア文 明論からの「声字実相義」でありましした。
印象に残った杉浦さんの言葉。「さっきの声明もそうですが、声を吐き出して唱えます。あれは身体の中にあるものが全部身体の外へ吐き出されているんです。
そして吐くと吸う、この吐くということが実はいろいろなかたちで深く捉えられ、象徴化され、図像化されているんです」「それからインドではよく一粒の種に
宇宙があるという言い方をするんです。そして一粒の種は全世界を表しているという。これはやはり生命原理がどんな小さなものにも飲み込まれているし、その
宇宙全体がどんな小さなものからも吐き出されていくような考えですね」「その吐くこと吸うことを人間だけではなく動物たちが人間に代って、あるいは神に成
り代ってやるんです。その動物が、人の姿、自然、大宇宙をみごとにつなげる中間の役割を果たすんです。西洋の文明はみんな動物を否定する。征服や殺りくの
対象です。アジアの人たちはいまもなお神と人間の間に動物や精霊たちの力がいっぱい満ち満ちていて、それが連続していると考えているんです。だからそうい
う思いを使ってみないと本当のエコロジーは見えてこないと思います。そういう深い教えを曼荼羅の細部はいろいろなかたちで教えているんです」。
















