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21世紀は密教の時代-空海の旗のもとに


 21世紀は、20世紀がやり残した「対立と殺戮」という宿題をかかえたまま、暗い深刻なスタートを切った。近代主義の象徴アメリカのグローバリズムとそれに反発するイスラム原理主義のテロリズムのローカルアイデンティティーとの衝突のなかで、罪のない人たちが犠牲になることに言いようのない腹立たしさをおぼる。科学技術を発達させた文明社会は、対立の解決のために「言葉」ではなく「武器」でしか会話ができないジレンマをまだ卒業できないでいる。 

 ローカルアイデンティティーが無差別テロに駆り立てられる時、決まって「独善」と「独裁」の権威づけとして宗教が悪用される。これもいわば人類が卒業できない「負の遺産」である。それと同じことが日本にもあった。1994~5年に起きたオウム真理教の「サリンテロ事件」である。 

 一連のオウム真理教事件で、残忍な大量無差別殺人の根拠に「密教」が語られた。「ポア」とか「四無量心」などという一般には聞き慣れない専門用語が、いかにも自明のことのように教団幹部や信者の口から飛び出した。世間ではとくに「密教」の真言宗僧侶の意見やメッセージを期待したが、真言宗(僧侶)からは何の反応もなかった。宗派当局者も学界も、ただ口をつぐんだままだった。それは既成教団の深刻な欠陥に起因していた。「伝統」をインフラとする教団は、現代社会の生きた問題に正面からコミットできないのである。私たちもこの「伝統」のなかの人間である。 

 私たちはオウム真理教事件を通じて傷ついた自分と「密教」の名誉回復を思いたった。遅ればせながらの「密教」からの反論である。誰もやらないので、私たちは愚直に行動した。しかし、ことはそう単純・簡単ではない。「伝統」で学び育った私たちには、反論の「学識」も「発信方法」もない。そこに一冊の本が目に飛び込んだ。かつて『遊』という前衛雑誌でその名を知られた松岡正剛氏(編集工学研究所所長)の『空海の夢』である。この本は伝統教学や生半可な仏教学ではとても読めない深く広い視座で異能の人「空海」が書かれていた。「空海」がアジアの気候風土や古今東西の哲学・思想や現代の諸科学と自由に重なりあっていた。私たちは、「空海」を「真言密教」「宗乗・宗学」「大師信仰」のなかに閉じ込め過ぎていたことに気がついた。現代社会の生きた問題に正面からコミットできない硬直性は、そこから来ていた。 

 私たちはちょうど「空海にもどること」、つまり「空海」の「知」と「方法」にもどって「現代に発言すること」を考えていたので、この本と松岡正剛氏に負うこととなった。「21世紀は密教の時代」というスローガンと「大師の旗のもとに」という「合言葉」はそこから生れた。 

 松岡氏との出会いによって、私たちの愚直な思いと行動は一気にリアルなものとなった。私たちは、21世紀の社会にみんなが「共有」できる精神的母体(「母なるもの」)を創出することをめざすことになった。それが21世紀における宗教者の仕事だと考えたからだ。 

 私たちは「空海」の「知」と「方法」を「母なるもの」として「OS化」する計画をもった。それを具体的な活動として事業化するのが「空海プロジェクト」である。どんな仕事をしている人でも、どんなライフスタイルの人にも、どんな思想や信仰をもつ人にも、その人の生き方のなかに自然に溶け込んでいる「母なる空海」、それが私たちのめざすものだ。「空海プロジェクト」のマスタープランは、私たちの公式サイト「空海スピリチュアル」
http://www.mikkyo21f.gr.jpに詳しい。 

 「空海プロジェクト」はすでにいくつかが始動している。1998年の公開フォーラム「環境問題を問う-ダイオキシン汚染列島」、1999年のオープンフォーラム「六塵ことごとく文字なり」、2000年の公開フォーラム「いま考えるべき脳死移植」、2001年のオープンフォーラム「五大にみな響きあり」は、いずれも満席満員の盛況で、メディア・先端技術・情報通信・ソフト開発・グラフィック・デザイン・番組制作・造形・音楽・舞踊・教育・広告・脚本・書道・絵画・宗教・役所・政治などの分野の方が、東京の会場に遠くは九州・沖縄・中四国・関西・北陸から来てくださっている。社会の第一線で、クリエイティブな仕事をしている人が「空海」に強い関心を寄せ、何かを感じとろうとしている。 

 また私たちは、このプロジェクトを通して「分母」としての「空海」を、「デジタル・アーカイブ」にして世に出そうとしている。デモ版を3月にリリースの予定である。「空海」の生涯からゆかりの人々(空海時代の世界年表添付)、密教思想(著作)や密教の展開(経典、教義、真言寺院、イコン、儀式法要、声明など)、そして「空海」の現代性(仕事の発想・着想とのリンク)へ、めくるめく数千の画像が「運河」のように、クリックひとつで奥へ奥へ案内してくれる「キャナライザー空海」である。 

 この「デジタル・アーカイブ」は、たとえば高野山のすべてを収録した「高野山アーカイブ」にもなり、ゆくゆくは、一般末寺の「○○寺(院)アーカイブ」として檀信徒布教教材にしていく。底辺からの「密教」の名誉回復につなげていく考えである。21世紀は「空海」の「方法」の時代である。 



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