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声字実相義

 声字実相という言葉は大日経疏巻七に「如来の一一の三昧門の声字実相は有仏無仏法として是の如くなるが故に」と説かれるところに見出され、それは大日経巻二具縁真言品における真言の相を解釈するところである。
 従来の仏教では言語文字は真如実相を表現し得ないとしているが、大師は大日経疏の思想に基づいて、声字がそのまま実相であると主張する。この思想は具体的には法身説法の思想を明らかにしたものである。法身説法の思想はすでに弁顕密二教論等で説かれ、それが顕密を区別する密教の特色の一つとされたが、その法身説法の思想を詳説したものが本書であるといえうる。
 本書は第一叙意、第二釈名体義、第三問答の三段から成っている。
 第一の叙意は声字実相の大意を叙述したもので、その中に「如来の説法は必ず文字による、文字の所在は六塵その体なり。六塵の本は法仏の三密これなり」といい、また「名教の興りは声字にあらざれば成ぜず、声字分明にして実相顕わる。いわゆる声字実相とはすなわちこれ法仏平等の三密、衆生本有の曼荼なり」ともいう。
 第二の釈名体義では、釈名と釈体との二段に分け、釈名の段では声と字と実相との名を解釈し、声字実相の関係を六合釈にあてて説く。つぎの釈体の段では、初めに経証として大日経具縁真言品の「等正覚真言」の頌を引き、この頌を釈して、平等の法仏は実相、真言は声、言名は字であるとし、また阿字本不生がそのまま声字実相であるともいう。
 つぎに正しく体義を釈す段では、「五大皆有響」の頌をつくって、一、声の体と、二、真妄の文字と、三、内外の文字と、四、実相との四項目に分けて考究している。この中、 一、声の体を考究して、内外の五大は悉く声響を具し、五大は声の体であり、音響はその用であるという。
二、真妄の文字を考究する段では、九界の文字は妄であるが、仏界の文字は真実であり、これが真言という秘密語ともいわれる。字母は阿等であり、その名字の根本は法身であるという。
三、内外の文字を明かす段では、六塵に各々文字の相があるとし、その中、とくに色塵を明かすに「顕形表等色」の頌をつくり、これを解釈して、有情と器世界とが相互に依報となり正報となる思想や、法然所成の法身の身土と随縁所成の報身・応化身・等流身の身土の思想などを説いている。
四、実相を考究する段は説かれていないが、その意味は叙意の中や、等正覚の頌の中で汲みとることができる。
 第三の問答の段も説かれていない。それd古来この書は未完成であるともいわれている。

 本書の著作年代は明らかでないが、「五大の義は即身成仏義の中に釈するが如し」とあるから、即身成仏義より後の著作である。
(『弘法大師著作全集』第1巻(山喜房仏書林、1968年)解説、勝又俊教)


【要文名句】               
●それ如来(大日)の説法は必ず文字による、文字の所在は六塵(色・声・香・味・触・法、つまり六境)その体なり。六塵の本は法仏の三密これなり。
●いわゆる声字実相とはすなわちこれ法仏平等の三密、衆生本有の曼荼なり
●五大にみな響あり 十界に言語を具す
六塵ことごとく文字なり 法身はこれ実相なり
●顕形表等の色あり 内外の依正に具す
法然と随縁とあり よく迷いまたよく悟る
●かの字母とは梵書の阿字等乃至呵字等これなり。この阿字等はすなわち法身如来の一一の名字密号なり。乃至天龍鬼等もまたこの名を具せり。名の根本は法身を根源となす。彼より流出して稍く転じて世流布の言となるのみ。

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【参考文献】               
★『弘法大師著作全集』第1巻(山喜房佛書林、1968年)
★『弘法大師空海全集』第2巻(筑摩書房、1983年)
★『現代語訳 声字実相義』(福田亮成、ノンブル社、2002年)

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