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般若心経秘鍵

 古来般若心経の註釈書はきわめて多数に上るが、それらはいずれも大般若経の精要を略出したものと見て解釈している。しかるに本書は、弘法大師が密教眼をもって般若心経を解釈したもので、般若心経の註釈書中、ユニークなものである。
 大師の経典批判の識見からいえば、「医王の眼には途に触れてみな薬なり、解宝の人は砿石を宝と見る」といい、また「顕密は人にあり、声字はすなわち非なり」と述べて、般若心経は甚深なる密教思想を開顕したものであり、すなわち大般若菩薩の大心真言三摩地を説いた密経であると断定している。
 本論では経を五段に分けて解釈している。第一の人法総通分(観自在~一切苦厄)を因・行・証・入・時の五つに分けて説き、第二の分別諸乗分(色不異~無所得)を建・絶・相・二・一の五つに分け、それを順次に、普賢菩薩(華厳宗)、文殊菩薩(三論宗)、弥勒菩薩(法相宗)、声聞・縁覚(小乗)、観自在菩薩(天台宗)の内証の法門であるという。第三の行人得益分(菩提薩埵~三藐三菩提)では、人と法とに分け、人に七ありとして、前の声聞・縁覚・法相・三論・天台・華厳の上に真言行人を加え、法に因・行・証・入の四つを分けている。第四の総帰持明分(故知般若~真実不虚)では、名・体・用の三に分け、また四種の呪を順次に声聞・縁覚・大乗・秘密蔵(密教)の真言であるとし、第五の秘密真言分(梵語呪)では、呪を五つに分け、順次に声聞・縁覚・大乗・真言の行果を明かし、諸乗の菩提証入の意義を説いたものとしている。
 最後に二つの問答を設けて、陀羅尼は密教の人のために説くもの。また顕教の心経も密教眼をもって見れば明らかに密経であると説き、流通分の頌をもって結んでいる。
(『弘法大師著作全集』第1巻(山喜房仏書林、1968年)解説、勝又俊教)


【要文名句】               
●それ仏法はるかにあらず、心中にしてすなわち近し。真如外にあらず、身を棄てていずくんか求めん。迷悟われに在れば発心すればすなわち到る。明暗他にあらざれば信修すればたちまちに証す。
●大般若波羅蜜多心経といっぱ、すなわち大般若菩薩の大心真言三摩地法門なり。
●般若心といっぱ、この菩薩に身心等の陀羅尼あり、この経の真言はすなわち大心呪なり。この心真言によって般若心の名を得。あるがいわく、『大般若経』の心要を略出するが故に心と名づく。これ別会の説にあらずと、云々。いわゆる竜に蛇の鱗あるがごとし。
●問う、陀羅尼はこれ如来の秘密語なり。ゆえに古の三蔵、諸の疏家、みな口を閉じ筆を絶つ。
(略)如来の説法に二種あり、一には顕、二には秘、顕機のためには多名句を説き、秘根のためには総持(陀羅尼)の字を説く。この故に如来自らア字オン字の種種の義を説きたまえり。これすなわち秘機のためにこの説を作す。(略)能不の間、教機に在るのみ。これを説きこれを黙するならびに仏意に契えり。
●真言は不思議なり 観誦すれば無明を除く
一字に千理を含み 即身に法如を証す
行行として円寂に至り 去去として原初に入る
三界は客舎のごとし 一心はこれ本居なり
●われ秘密真言の義によって 略して心経五分の文を讃す
一字一文法界に遍じ 無終無始にしてわが心分なり
翳眼の衆生は盲いて見えず 曼儒・般若はよく紛を解く
この甘露を灑いで迷者を霑し 同じく無明を断じて魔軍を破せん

【関連サイト】              

【参考文献】               
★『弘法大師著作全集』第1巻(山喜房佛書林、1968年)
★『弘法大師空海全集』第2巻(筑摩書房、1983年)
★『現代語訳 般若心経秘鍵』(福田亮成、ノンブル社、2001年)

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